• 王子の復讐契約
  • タグ:#復讐#強いヒロイン#契約結婚
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  • 再生: 出演: AIショートドラマ, AIドラマ 状態: 完結
  • 十一歳のあの夜、春枝は自邸の井戸の底から、鉄格子の隙間ごしに一族が皆殺しにされるのを最後まで見ていた。祖父が二度目の処方を拒んだ——ただそれだけの理由で、太傅・湊明は須藤家十一人を一人残らず斬らせた。夜が明けてから、彼女は井戸の壁に十一の血の手形を残して這い上がる。

    十二年後。瀬戸の漁村で薬草を採って暮らす彼女は、嵐の磯で矢を受けた男を拾う。腰には皇室の紋章、胸の皮膚の下には暗紫色の筋——「紫脈」。生まれる前から体に流れている毒で、彼の母を殺したのと同じ最初の一批だった。

    取り引きは、そこで成立した。私がその毒を抑える。あなたは私を京都へ連れて帰り、湊明を討つのを手伝う。

    彼女は親王府の離れに、最下級の姫侍として入る。盟約の第一条——「褥の上では、どちらも相手を組み敷かない」。

    港で開放骨折をひとつ治しただけで、京は彼女を「春医」と呼びはじめた。政事堂の書庫では、二通の族滅令が同じ筆跡で書かれていた。祖父が遺した供述にはこうある。二度目の処方はすでに焼いた。この毒、梔子炭にて暫く抑えられる。罪は我らの代にあり、後の世に累を及ぼさず——二人の仇は、最初から同じ一人だった。

    証拠は湊明を二度殺せるだけあった。だが帝は十年前からすべてを知っていて、動かなかった。動けないのではない、動きたくないのだ。湊明が倒れれば、朝堂で唯一の実力者になるのは摂政親王なのだから。そしてそのとき春枝は、自分の脈から新しい命を診てしまう。

    湊峥は、証拠と辞表を同時に差し出した。兵権も、爵位も、封地も、すべて。十年かけて自分の力を静かに解体してきたのは、この日のためだった。

    そのあとは、海辺の暮らし。薪を割り、粥を炊き、おむつを縫い、娘に木馬を削る。曲がった薪を、彼は捨てない。一本ずつ、薪の山のいちばん上に並べる。——そうしなさいと、彼女が言ったから。

    「あのとき私は、去ることが終わりだと思っていた。でも本当は——そこからやっと、自分のために生きはじめたのだ。」